けんてぃー大学

20代の国立大学職員による仕事のことその他関心があることの書き散らかしブログ

東京医科大の女性減点問題の本質と解決策を考える

こんにちは,けんてぃーです。

 

東京医科大の女性一律減点問題が大きな話題となっていますね。
これについて取り上げてみます。

 

 

1.なぜこの不正が起こったか?


この問題は以下の点がその原因であり,問題の本質でしょう。

 

医学科は入学と就職が直結している
医師のブラックな労働環境
女性差別が許されない風潮

 

医学部医学科は,卒業生の9割以上が臨床医となります。
そして,医師の現在の労働環境の過酷さは周知のとおりです。

また,診療科や業務によってはある程度の腕力や体力が必要なものがあります。
そうした環境下で労働力として重宝されるのは,性差による傾向として仕事を離れる期間があり体力が低い女性よりも男性です。


そうした背景から,この問題は医師という職業の労働環境と結びつけて考えざるを得ません。

 

上記のことを理解したうえで,「だったら女性減点を公表しておけ」,「男女別で定員枠を設定しておけ」との批判があります。こういう意見があるのは当然だと思います。


しかし,女性差別に対する風当たりが強いこのご時世に,入試で「女性差別します」と公表した大学に対する世間の風当たりはどうなるでしょうか?


中には,例えば男性比率が高い工学部で女性枠を設けたりといった「女性優遇」するような大学はいくつかあります。
「逆差別だ」などと言われることがありますが,「女性差別解消」の気運の中,世間を騒がすほど問題視はされません。


しかし,「女性差別」するとなった場合,強烈なバッシングとブランド価値の下落は火を見るよりも明らかです。

大学としてその判断を下すのは非常に勇気が必要がいりますし,とても実行できなかったでしょう。


女性差別解消」の空気感が裏での不正に繋がり,結果として女性を苦しめる結果となった。これは考えさせられるものがありますね。

 

2.問題の解決策

さて,この問題は入試がどうとか東京医科大がどうとかではなく,本質的解決が必要です。そうしなければどうせまた似たような事案が起こります。

今回のケースでは労働環境の改善が必要で,そのためには生産性の向上よりも何よりもやはり

医師の絶対数の増加

が必要になるでしょう。

ちなみに現在でも医学部定員枠増加措置は行われており(定員枠の数%の増加),将来の医師の需給予測からすでにその縮減期に入っています。

しかし,この問題を本気で解決(私の中では,労働基準法に違反せず,女性多数でも望まない妊娠時期のコントロールや育休時期の制限等を必要としない体制にすること。)しようと思えば,今より医師数が倍以上は必要になるでしょう。

 

しかし,そうすると医師のレベルは下がり医師の給料は大幅に下がりますし,就職できない医師も出てくるという新たな社会問題が発生するのは間違いないですね。


そして,高額なお金と6年という時間を使って就職しても待遇が良くない,そもそも就職できないとなると目指す人の絶対数が減り,質の低下は避けられないません。それはそのまま私達が受ける医療レベルの低下につながりますね。
(結果として職を求めて医師が地方に出ていくようになると,地方に医師が少ない医師偏在問題は解消に向かっていくでしょうけど。)

 

ではそうならないようにしようとすると,病院は現在からすると過剰な医師数を待遇を大きく落とさずに雇用する必要があります。現状それは不可能です。
その人件費を賄おうとすれば,行政が動いて診療報酬の大幅増加,つまり,病院利用者や国民の医療費負担の大幅増加が必要となりますね。

都合よく痛みを伴わない解決とはいかなさそうです。

 

3.まとめ

実態を伴わない表向きの女性差別解消は,時に女性を苦しめることがあります。
この問題を表面的でなく本気で解決しようと思えば医師の絶対数を増やすのは必須です。
そのためには,

医師の待遇悪化と医療の質の低下
国民の医療費負担の圧倒的な増加

 

上記のどちらかは避けられません。その選択をよく考える必要があるでしょう。
悲しいのは,どちらにしても実行に移す場合には想定しうる障害が大きく,なかなか実現できるイメージがわかないことです。

もし本質的解決を目指す流れになったとしても,落とし所として,

待遇を落とさない程度の医師数の増加が必要だ→既に医学科入学定員増加措置はしている,成果が出るまで時間がかかる→じゃあやるとしたらその期間延長だ

上記のようになって,結局中途半端で解決しないっていう結末が簡単に想像できてしまうのは悲しいことですね。。