けんてぃー大学

20代の国立大学職員による仕事のことその他関心があることの書き散らかしブログ

大学職員が考える「ブラック部活問題」

ブラック部活とは、生徒の意思に反しての部活への強制加入や、健康を脅かすほどの練習量、人格否定にもなるような暴言などがある学校の部活動のことで、近年問題視されています。

昨日もNHKの情報番組「あさイチ」で部活問題が取り上げられていました。

子どもの部活とどう向き合う?|NHKあさイチ

部活は、入試との関連性もあります。大学職員として、そこにも注目して私の意見を書いていきます。

 

 

1.ブラック部活の実態

ブラック部活の実態としては、下記のリンクの記事が参考になります。

 

こどもに理不尽強いる「ブラック部活」の実情 丸刈りや白飯2杯ノルマも当たり前 (1/4) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

休みがない、顧問の暴言…「うちの部活ブラック!」と思った瞬間 / 【スタディサプリ進路】高校生に関するニュースを配信 | 【スタディサプリ進路】高校生に関するニュースを配信

 

取り上げられている問題を箇条書きしてみます。

 

・週一の休みすらない

・体調不良、怪我でも休めない

・夏場に猛暑地での過酷な練習

丸刈り強制

・顧問の暴言

・理不尽な上下関係

 

などなど、書き切れませんね。。

 

理不尽と根性論の押し付けで身も心も削られていく学生が可哀想でなりません。

これらの問題の根幹にあるのは、部活のトップ(顧問)である教員の知識や指導力、そしてマネジメント力の欠如でしょう。

 では、ただ教師を責めれば良いかというと、そうでもありません。部活は教員にも過度な負担を強いることになっています。教員とってもまたブラックなのです。

平日だけでなく土日もろくに休めず、長い時間拘束される時間の割には手当はほとんど出ません。

そもそも専門性があるわけでもなんでもない部活の顧問をすることを拒否できないといった問題もあります。

保護者からの過度な期待等もあるようです。下記リンクの記事など参考になります。

現役教師がブラック部活の実態を語る 「誰も歯止めをかけられない」 - ライブドアニュース

2.ブラック部活がブラック企業を作り出す

ブラック部活を経験することで、学生はブラック企業社畜予備軍となっていきます。
ブラック部活で押し付けられる価値観として、主に以下のようなものが思い浮かびます。

・結果を出すのに必要なのは努力量
→とにもかくにも努力量・練習量が大事。これは長時間労働を強いるブラック企業と全く同じですね。そこに努力の方向性や適切な休養の必要性、生産性の向上という概念はありません。

・先輩・顧問には絶対服従とする徹底的な年功序列
ブラック企業の上司には、部下をサンドバック代わりにして、不必要に理不尽を強いる人が多いです。部活で植え付けられた理不尽耐性と奴隷根性がそれを許してしまいます。

・苦しむことで成長する
→まさにブラック企業の決まり文句ですね。こう言って社員を劣悪な環境で働かせ続けるのがブラック企業の典型的なやり方です。入社前からその精神を持っている社員はまさにかもねぎ状態ですね。

成長の過程には苦しさを伴う可能性がある、というだけの話に気づけなくなるのです。

 

ブラック部活で上記のような価値観に染め上げられた学生は、自分で考える、ということができなくなります。そして、「理不尽は耐えるもの」という精神で、企業がブラックでも簡単には辞めません。

そうして劣悪な労働環境に耐えて辞めない人がいるからこそ、ブラック企業が存在するのです。

 

3.求められる部活以外の選択肢

ブラック部活被害者を減らすために、部活の強制加入をやめさせ、学生が部活以外の場で自分のやりたいことができる環境を作り出すことが必要になります。

現状、日本では地域のクラブ活動が活発ではなく、選択肢が部活しかない、ということが多いです。また、地域のクラブ活動があったとしても、非常にレベルが高いものであることが多いというのもあります。


部活をする学生には、上を目指して必死に頑張りたい学生もいれば、ただ好きなことを楽しみたい、という学生もいますが、多数派なのは後者でしょう。

真剣に部活をしたい人が優先されるべきという意見はもっともですが、その結果として、楽しみたい学生には最適な選択肢がありませんね。

好きなことをするためには、苦しい思いをする部活に入らざるを得ない状況になっているのです。

 

そのため、学校以外に、地域でクラブ活動できる機会の増加が求められます。

特に、世代を超えて楽しめるような、ゆるーいクラブを増やすことを目指すべきでしょう。不本意ながら部活に入るという学生のニーズに応えることができ、更には地域の活性化にも繋がると考えます。

 

4.入試と部活の関連性

大学入試の在り方も、部活が厳しくなる一因ではあります。「部活を辞めたら進路に響く」とは、ブラック部活で学生を退部させない常套句です。

 

確かに、現状でも推薦入試やAO入試では課外活動の実績を評価する事が多々あります。例えば全国レベルの大会で活躍した場合などです。

これは私も有意義だと思います。それが結果として部活を厳しいものにし、厳しくする過程で(不必要な)理不尽が発生する一面があるのは、仕方がない事だと思います。

 

しかし、その評価する実績を「部活」での実績に限定している場合は問題です。

部活以外にクラブ等で活躍している人が評価されないのは不合理と言うほかありません。そもそも、評価されるべきトップ層は、部活より高いレベル・舞台を求めてクラブ等に所属しているケースも多いわけですしね。

さらにタチが悪いのが、部活に所属している事自体を入試での評価項目にしたり、ましてや出願条件にするケースです。こういった入試の存在が、不本意入部や強制入部に直結してしまいます。

 

この入試における部活の評価は、今でこそ推薦やAOでの、全体から見れば一部のみです。しかし、近年は大学入試改革が声高に叫ばれ、入試において、知識だけでなく、「多面的・総合的」に評価することが求められています。

その基準として入試における部活の重要性が高まることになれば、ブラック部活被害者を増やしてしまう恐れがあるのです。

 

5.おわりに

書きたいことはまだまだありますが、長いのでこのくらいで。

ブラック部活問題は、学生のためにも教師のためにも、ひいては日本社会のためにも、一刻も早く解決するべき問題です。

大学関係者としては、大学入試改革がその問題を助長しないことを願うばかりですね。